令和5年度事業報告及び決算
令和5年度は、新型コロナウイルス感染症が5類感染症に移行し、通常の体制に向かいつつもウクライナ情勢に加えて、中東紛争、為替相場等の影響により物価高騰が続くなどの不安定な社会情勢、更には今年元日に発生した能登半島地震のような自然災害など、様々な環境変化が学校給食にも影響を及ぼしました。
このような中、県教育委員会、市町村教育委員会等、関係機関のご理解とご協力の下、研修会・講習会等については、開催方法を工夫することでほぼ計画通りに実施することができました。
また、学校給食は例年並みに実施されたことから、安全安心な食品を安定的な価格で提供するとともに食育の推進に努めました。
実施した事業は、以下のとおりです。
Ⅰ 会議等の開催
1 評議員会及び理事会
評議員会を4回( 5/22(書面)、6/21(定時)、7/28(書面)、3/26(臨時))、理事会を4回( 5/12(書面)、6/5、7/18(書面)、3/6 )開催しました。
2 会計監査
監事による会計監査(5/31)を執行しました。
Ⅱ 実施した事業
1 食品の提供に関する事業
(1)食品の提供実績(別表第1)
昨今の急激な物価高騰により、5年度当初においては、加工委託先や仕入先の切実な要請に応えるため、一定の価格改定をさせていただくこととなりました。年度途中においても各仕入先から値上げ要請が相次ぎ、一部受け入れざるを得ない厳しい状況が続きましたが、新米の米価改定分を除き、取扱食品の提供価格については、年度途中の価格改定は行わないこととして給食実施現場への支援と取扱食品の利用促進に努めました。
基本食品については、児童生徒数の減少及びインフルエンザ等感染症の影響などにより、提供食数は18,167,816食で前年度比2.2%減となりました。
その内、米飯は、10,548,707食で前年度比0.7%減、パンは、小麦粉パンが4,316,670食で前年度比1.9%減、米粉パンは4年度に会津若松市が実施した米粉パンの提供が平常の献立に戻ったことなどから375,577食で、前年度比33.2%減となりました。
また、めんは、ソフトめんと中華めんの合計が2,926,862食で、前年度比2.1%減の提供となりました。 次に、提供額は、1,283,526千円で、新米価格の大幅な値上がりなど主食単価の上昇により前年度比7.0%増となりました。
一般食品については、児童生徒数の減少、感染症の影響、前年度実施した国の無償提供事業がなかったことにより、提供量は1,087,942㎏で前年度比2.6%減となりました。
次に、提供額は、年度当初からの食品価格の値上げや4年ぶりにとなる食品展示会の開催など食品の利用促進に努めた結果、1,079,403千円で前年度比10.4%増となり、計画では前年度比プラス1.3%を目標としておりましたが、大きくプラスとなりました。
基本食品と一般食品の合計では、重量合計が2.2%の減、提供額が8.5%の増という結果になりました。
(2)基本食品の提供
ア 精米
玄米の購入及び精米加工の委託先である全農パールライス㈱福島支店において、引き続き、袋詰めした給食用精米の全袋について放射性物質検査を行うとともに、本会においても抽出検査を実施し、より安全・安心な米を提供しました。
また、市町村の要望を最大限に反映できるよう、全農県本部及び全農パールライス(株)福島支店と連携し、安全性を確認の上、市町村産米等の必要量を確保するとともに、適正な価格で仕入れ、安定的な提供に努めました。
併せて、玄米・精米検定要領に基づき、品質、量目、包装荷姿及び数量等について一般財団法人日本穀物検定協会の検定を受けております。
イ 米飯
学校給食の中核となる米飯類については、品質管理を徹底するとともに、本会が選定した委託加工工場において、適切な安全衛生管理のもと炊飯加工し、学校等に安定的に提供しました。
ウ パン及びめん
本会が選定した委託加工工場において、適切な安全衛生管理のもと、本会指定の原料により「パン」及び「めん」に製造加工し、学校等に安定的に提供しました。
原料である小麦粉については、小麦粉検定要領に基づき、一般財団法人日本穀物検定協会の検定を受けております。
県内産・地元市町村産米を使用した米粉パンについては、希望する市町村に対し提供しました。
委託加工工場におけるパン製造技術の安定を図るため、例年10月に、県、関係機関及び団体と連携し行っている品質調査会については、コロナ禍以前と同様、栄養教諭等9名の方々にも審査員として参加いただき、委託加工工場37工場全てのパンについて実施しました。判定の結果は、全工場が「優」でした。
エ 加工事業者の選定
令和6年度の主食委託加工事業者については、5年度をもって委託加工を辞退する1事業者を除き事務局で書類審査を行い、パン・米飯加工工場36事業者(5年度対比1社減)及びめん加工工場11事業者(5年度対比増減なし)を選定しました。
オ 主食委託加工への理解促進
4月開催の都市及び町村教育長協議会総会に出向き、主食(米飯、パン及びめん)の委託加工事業者の大幅な減少等の現状とその要因や課題、委託加工体制の優位性(特に、委託炊飯方式維持の重要性)について説明するなど、食品提供事業の継続について理解を求めました。
(3)一般食品の提供
ア 学校給食用食品委員会
本会が取扱う推奨食品の選定については、「学校給食用食品委員会」の開催に代え、本会職員が書類及び試食審査を行い、加工品や素材品、調味料等、新たに27品目を選定して給食実施現場へ食品案内を行いました。
イ 取扱食品の利用促進
取扱食品の安全性、品質、価格についての理解を得るため、一般食品価格表、ホームページ、給食会だよりなどを活用した食品案内及び献立紹介を行いました。
また、急激な物価高騰により仕入先からの値上げ要請が相次ぎ価格は上昇しましたが、年度途中の価格改定は行わず学校給食の実施を支援するとともに取扱食品の利用促進に努めました。
ウ 共同購入の実施
安全かつ良質な学校給食用食品をより低廉な価格で安定提供するため、北海道・東北ブロックの学校給食会が共同で15品目を購入し提供しました。
エ 食品提供についての普及啓発
保護者及び学校給食関係者に本会の食品提供事業等について理解していただくため、学校や各地域で行われた学校給食試食会等において本会取扱食品を提供するとともに、その安全性、安定的提供、本会事業の公益性などについて説明を行い、積極的な普及啓発に努めました。(提供件数11件、508人対象)
オ 提供食品価格調整事業
「たけのこ水煮」「かつおだしパック」「米油」など、学校給食用として使用頻度が高く、かつ代替が難しい食材の価格が高騰し給食への使用に影響があると判断した食品等について、対象品目を拡大し、予算を倍増して価格支援を拡充しました。
カ 配送環境等の整備
取扱食品の安全性と品質管理を徹底するため、配送事業者との連携を密にし、走行時の交通事故防止及び荷下ろし時のトラブル防止を徹底するとともに、新型コロナウイルス及びノロウイルスなどの感染防止対策として配送車への消毒液配置や運転手の健康管理、手洗いの励行を推進しました。
キ 食品提供事業者との連携等
本会取扱食品の品質保持、衛生管理を徹底するため、食品提供事業者との情報交換と情報共有を積極的に行うとともに、価格については、学校給食現場へ適正な価格で提供できるよう、随時、交渉等を行いました。
(4)学校給食用牛乳代金の徴収・配分
県が定めた学校給食用牛乳供給実施方針に基づき、平成12年度から県より指定を受けている学校給食用牛乳代金配分業務について、引き続き受託し、牛乳代金の 請求、受領、事業者への支払い等を適正に執行しました。
2 食品安全衛生管理等に関する業務
(1)食品安全衛生管理の徹底
本会の食品取扱については、食品衛生法に基づく「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」に基づき取り組みました。 また、食品安全衛生管理室による本会取扱食品の衛生・品質管理のほか、要請に応じ食品衛生管理アドバイザーを市町村等関係機関が主催する衛生講習会等に派遣しました。(派遣件数3件 うち、オンライン研修1件)
(2)委託加工工場の衛生管理
主食の委託加工工場においてもHACCPによる衛生管理を推進しました。 全ての委託加工工場代表者等を対象とした衛生研修会については、コロナ禍以前と同様の集合形式で、8月に(一社)日本食品衛生協会専門家及び本会衛生管理アドバイザーを講師として開催しました。(受講者55名)
また、全工場(48工場)を巡回する実地調査を行い衛生管理の保全に努めました。なお、製造食品への異物混入等の指摘があったことについては、直ちに現場に急行し現物等の確認を行うほか、原因の分析調査、工場に対し改善指導を行い、その結果を速やかに学校等に報告しました。
(3)食品検査
取扱食品の安全性と品質管理の徹底を図るため、次のとおり、定期的、計画的に取扱食品を検査しました。
ア 検査室検査
(ア)放射性物質検査
食品の安全性を確認するため、本会所有の放射性物質検査機器2台と県から借用している検査機器1台を用いて県産食材を中心に放射性物質検査を行いました。検査実施件数は5,361件で、その検査結果はすべて検出下限値未満(検出下限値:10㏃/kg)であり、本会のホームページ上に検査後速やかに公表しました。
なお、平成24年5月の検査開始以来、検査実施総件数は140,446件となりました。
(イ)細菌検査
取扱食品を計画的に抽出し、年間554検体の細菌検査を実施し、その結果をホームページ上でお知らせしました。検査結果は、食品衛生法に基づく食品の規格基準等にすべて適合していました。
(ウ)ヒスタミン検査
本会では平成28年度から、赤身魚の冷凍切り身及び加工された冷凍魚等についてヒスタミン濃度を測定し、安全性を確認しています。検査開始からこれまでに479検体(令和5年度50検体)のヒスタミン濃度の検査を実施した結果、全てが40ppm未満であり問題のない値であることを確認しました。
イ 委託検査
残留農薬については、主食(パン及びめん)と冷凍野菜等10品目を、また、食品添加物(保存料:ソルビン酸、発色剤:亜硝酸塩)については17品目を専門検査機関に委託し検査を行い、その結果を本会の給食会だより等で公表しました。残留農薬の検査結果は、全品目が不検出で、食品添加物についても全品目が食品衛生法に基づく食品の規格基準に適合していました。
ウ 依頼検査
県パン及び生麺組合からの依頼を受けて主食の細菌検査を実施し、安全性を確認しました。依頼検査件数は85件で、検査結果は、各生産者団体等が定める基準に適合していました。
(4)検査機器の貸出
学校給食実施現場に「手洗いチェッカー」、「簡易細菌検査器」及び「ATP拭き取り検査器」等を無償で貸出しました。(貸出件数76件)
(5)食中毒予防対策
職員自身及び家族の健康チェック、職場内手洗いの遵守、定期的な検便を実施しました。
委託加工工場の衛生管理の徹底、配送事業者と連携し、配送中の食品の衛生及び温度管理を徹底しました。
3 食育推進等に関する事業
(1)食育活動等への講師派遣
児童生徒を対象とした出汁に関する食育授業に、本会職員のほか取引先の担当者を講師として派遣し、食育活動への支援を行いました。(派遣件数12件)更に、県民の方々を対象とした出前講座や子ども食堂関係職員を対象とした衛生管理研修会等へ本会職員を講師として派遣しました。(派遣件数13件)
(2)調査研究
食育に関する調査研究会については、新たな研究課題や今後の在り方について検討を進めました。
(3)各種イベント・事業への出展・共催
県教育委員会が主催する「ふくしまっ子ごはんコンテスト」に共催して、二次審査及び最終審査会場を提供し、審査員として本会役職員を派遣しました。
また、表彰授与等を行ったほか県教育委員会の監修の下、入賞作品を掲載した作品集を発刊し県内全ての小中学校等に配布するとともに、応募者全員に参加賞(クリアファイル)を贈呈しました。
更に、県学校給食研究会栄養士部会や県学校保健会及び県牛乳普及協会主催行事への共催及び後援を行いました。
(4)研究団体等への支援
学校給食に関する研究団体等(5団体)が行う食育に関する研究事業等を支援するため、県学校給食研究会、同研究会共同調理場部会、同研究会栄養士部会、全学栄協議会福島県支部及び栄養教諭食育研究会に対し事業費の一部を補助しました。
(5)地産地消の推進
JA等生産団体、食品製造加工事業者等と連携し、新たに「冷凍県産いちごソース(果肉入り)」や「県産スライスもち(トック)」、「冷凍県産大豆」を開発し、学校給食における地産地消の推進を図りました。
(6)教材・食器具等の貸出事業
学校等における食育活動を支援するため、指導用フードモデル等の教材やテーブルマナー用食器等の無償貸出を行いました。(貸出件数1,057件)
4 学校給食の普及充実等に関する事業
(1)広報活動
ア 「学校給食会だより」の発行
学校給食に関する様々な情報や学校給食関係者の声を掲載した「学校給食会だより」を内容の充実を図りながら毎月発行し、県内全ての学校等に配布しました。
イ ホームページ等による広報
定期的にホームページを更新し食品検査結果や研修会資料を掲載しました。
(2)研修等の実施
ア 栄養教諭等研修
学校給食の食中毒防止を目的に開催している学校給食調理員及び栄養教諭等を対象とした衛生講習会については、県教育委員会の協力を得て(一社)日本食品衛生協会が主催するeラーニングにより、それぞれ7月と9月に開催しました。
また、4月に新任所長等研修会、6月に学校給食管理システム操作研修会、11月に栄養教諭・学校栄養職員研修会を開催しました。(受講者131名)
イ 中央研修及び全国大会への参加支援
栄養教諭や学校栄養職員等の研修や情報収集のために参加支援をしている第64回全国栄養教諭・学校栄養職員研究大会(鳥取県)、第74回全国学校給食研究協議大会(東京都)については、コロナ禍以前と同様に参加支援を行うとともに、食品工場視察研修についても実施しました。(参加者15名)
(3)貸出事業
ア 冷凍庫等の貸出
学校給食用食品の品質保持を図るため、学校給食用冷凍保管庫及び冷凍冷蔵保管庫を無償で貸し出しており、5年度は年度末に8台の更新貸出等を行いました。
イ 学校給食管理システムの貸出
栄養教諭及び学校栄養職員の給食事務の軽減化を図ることを目的として平成14年度に導入した本システムについて、市町村教育委員会等からの要望に応じた操作指導や直接学校等へ出向き個別指導を行い利用の定着化に努めました。
ウ 会場貸出
学校給食の円滑な実施及び食育の推進を支援するため、関係機関・団体等に対し、本会研修室等の貸出を行いました。(貸出件数14件)
特に、6月には、地元福島市立松陵中学校の給食委員会の生徒が、地域交流活動で来会し、学びの場として本会研修室を貸出すとともに本会職員が講師を務め「学校給食や本会の歴史」について講話を行うなど、地元学校の学習支援を行いました。
(4)学校給食優良団体・功労者の表彰
10月26日、県教育委員会及び県学校給食研究会の共催の下、優良団体4団体、学校給食功労者9名及び県産食材活用部門1団体を表彰しました。
5 運営管理に関する業務
(1)法人運営管理
公益財団法人として、法制度の趣旨に則り、引き続き適切な法人運営に努め、安全・安心な学校給食用食品の安定的な提供及び食育の推進を支援しました。
また、法人運営の基礎となる財務・会計については、公認会計士の指導を受け適切な運営に努めました。
(2)本会経営ビジョン及び中期経営目標の進行管理
毎月の定例業務会議において、売上状況などの業務報告を行い、事業の進行を管理しました。
(3)施設整備資産取得・改良資金積立及び施設整備基本構想の策定
施設整備資産取得資金については、定期預金2,000万円と5年度積立予定額3,000万円を合わせ、5,000万円の地方債を購入し積み立てました。
また、施設整備基本構想の策定に向け、近隣学校給食会の管理棟及び倉庫視察を行ったほか内部検討会を6回開催し検討しました。その結果、施設整備計画は、今後の運営に大きく影響することから、昨今の建設費の高騰、将来の給食人員の減少がもたらす運営環境の変化等を考慮するほか、建築関係専門家の助言を仰ぐなど、引き続き基本構想の策定に向け検討を深めることとしました。
(4)職員の資格取得等研修及び厚生の充実
業務のスキルアップを図るため、(一社)全国学校給食推進連合会、北海道・東北ブロック学校給食会、ふくしま自治研修センター、日本食品衛生協会等主催の集合研修やオンライン研修を職員が受講しました。(受講者延べ11名)
また、職員の定期健康診断等、健康増進に努めるとともに、新型コロナやインフルエンザワクチンの接種を推奨いたしました。
(5)危機管理対応
県内全域に良質、低廉、安全な食品を安定的に提供する方針の下、台風発生等の荒天時においても給食の実施に影響が出ないよう、委託加工事業者や配送事業者と十分に連携し定時の配送に努めました。加工事業者の委託加工の辞退に対しては、県パン協同組合と協議し、近隣事業者との調整や配送計画の見直しにより、市町村の意向に応じた主食の継続的な提供に努めました。
また、感染症等による休校や学級閉鎖等に際しても、危機管理マニュアル等に沿って迅速、的確に対応し、学校給食の安定的な実施支援に努めました。
更に、災害や機器故障等により給食実施に支障が生じた場合の緊急代替用食品を5千食程常備し、提供体制を維持してまいりました。
(6)学校給食に係る全国組織等への参加
6月及び3月、(一社)全国学校給食推進連合会社員総会に出席しました。
また、5月の北海道・東北ブロック学校給食研究協議会(山形県)、9月の第1回共同購入委員会(新潟県)、10月の第2回常勤役員会(岩手県)及び令和6年2月の共同購入委員会(岩手県)等、ブロック会議は全て集合形式で開催され、共通課題について情報交換しました。
(7)事務の効率化と経費の節減
令和3年度に導入したZOOMを、5年度も他団体との会議やオンライン研修等に活用するなど、事務の効率化を図り経費節減に努めました。
6 主要な行事等
別表第2「令和5年度主要行事等一覧表」のとおり。