平成27年度事業報告及び決算
概況
平成27年度は、東日本大震災と東京電力株式会社福島第一原子力発電所事故から5年目となりましたが、新産業基盤の整備、避難地域の再生等、ようやく震災からの復興が進んできたものの、まだ風評被害は収まらないなど震災と原発事故の影響が残る年でありました。
こうした中、ノロウィルスやヒスタミンによる食中毒事故や異物混入などの食品事故の発生が県内外で見られたことから、学校給食においても、食品の放射性物質検査の徹底をはじめ食品の安全衛生対策の充実・強化が強く求められました。
また、風評被害の払拭と併せ、学校給食での地場産食材の利用促進も回復の兆しが見えてきており、郷土料理等の給食用レシピ化を図った平成27年度食育に関する調査研究会報告書の配布などにより、今後の地場産物を取り入れた献立の普及などその活用が期待されます。
本会といたしましても、こうした動きに呼応しながら、安全安心な食品の安定的な提供と食育の推進に努めたところであります。
実施した事業は、以下のとおりであります。
Ⅰ会議等の開催
1 評議員会及び理事会
評議員会を3回(4/15、6/26、3/24)、理事会を3回(4/8、6/8、3/16)開催しました。
2 その他の会議
学校給食用食品委員会を3回、食育に関する調査研究会は臨時開催を含め10回、学校給食安全衛生推進会議を2回、委託加工事業者選定委員会を1回、北海道・東北ブロック学校給食会合同職員研修会を1回開催しました。
3 会計監査
監事による会計監査を執行しました。
Ⅱ実施した事業
1 食品の提供に関する業務
(1)取扱食品の安全・安心の徹底
東京電力株式会社福島第一原子力発電所事故以降、県民の食の安全に関する不安や関心が依然として高いことから、以下のとおり取組み、取扱食品の安全・安心の確保に努めました。
ア 原料・産地の確認等
取扱食品の仕入先に対し、事前に原料配合、原料産地等が確認できる書類の提出を求めるとともに、入荷時における変更有無等の確認を行うなど、検収の徹底を図りました。
また、本会食品検査室で抜取りによる細菌検査を実施したほか、冷凍野菜等の残留農薬検出検査及び食品添加物の理化学検査を専門機関に委託して実施し、その結果をホームページや給食会だよりで公表しました。
イ 食品の放射性物質検査
食品の放射性物質による汚染状況を継続的に確認する必要があることから、本会取扱食品すべての品目についての放射性物質検査を引き続き実施し、安全を確認した上で各学校等へ納入しました。
検査に当たっては、福島県教育委員会から検査機器の借用を引き続き受け検査を行いました。
検査実施件数は、13,786件で、その検査結果は、すべて検出下限値未満(検出下限値:10Bq/kg)であり、本会のホームページで公表しました。なお、平成24年5月の検査開始以来、検査実施件数は、64,715件となりました。
(2)食品の提供実績
基本食品及び一般食品の提供量及び金額は、別表第1「食品提供実績」のとおりです。
(3)基本食品の提供
ア 提供量及び提供額
依然として続いている原発事故による児童生徒の県外避難のほか、26年産米米価の大幅な下落などにより、提供食数及び提供額については、次のとおりです。
まず、提供食数では、基本食品合計が、21,503,825食で、前年度比2.6%減、そのうち、米飯は、11,937,806食で、前年度比2.9%減、パンは、5,726,048食で、前年度比4.1%減、米粉パンは、170,356食で、前年度比18.9%増でありました。
また、めんは、3,669,615食で、前年度比0.1%増の提供となりました。
次に、提供額は、1,197,612千円で、前年度比4.9%減でありました。
イ 主食の安全・安心の確保
- 米飯類
安全で安心できる米を安定的に提供するため、JAパールライン福島株式会社と協力連携し、各市町村の意向を十分に確認しながら、次のとおり対応しました。
県が行った玄米の放射性物質全袋検査を踏まえ、玄米・精米双方の放射性物質検査を継続して行い、玄米・精米検定要領に基づき、品質、量目、包装荷姿及び数量等について一般財団法人日本穀物検定協会の検定を受け、各市町村の要望に応じた地元産米の提供を推進したほか、その他一部の市町村に対しては平成26年度に引き続き、会津産米又は北海道産等の県外産米を提供しました。
また、米飯についても、本会で細菌検査を行い、安全性を確認し提供しました。 - パン及びめん
パン及びめんの原料である小麦粉については、小麦粉検定要領に基づき、一般財団法人日本穀物検定協会の検定を受けるとともに、パン及びめんについても、本会で放射性物質検査、細菌検査及び専門機関において残留農薬について確認し、安全な食品の提供に努めました。
ウ 食品の安定的な提供
県内全域に同じ食品を安定的に提供する方針のもと、台風発生等の荒天時においても給食の実施に影響が出ないよう、委託加工事業者や配送事業者と十分に連携し定時の配送に努めました。また、加工事業者の廃業などの場合に対しても近隣事業者との調整や配送計画の見直しにより、市町村の意向に応じた主食の継続実施に努めました。
エ 主食の品質向上
- 市町村産米等の安定提供
学校給食の中核となる米飯類については、一般財団法人日本穀物検定協会の検定を受け品質管理を徹底するとともに、放射性物質検査に関する情報収集に努め、市町村の要望を最大限に反映できるよう、全農福島県本部及びJAパールライン福島株式会社と連携しながら、安全性を確認の上、市町村産及び会津産米の必要量を確保し、安定的な提供に努めました。 - 県・市町村産米の米粉パン
県内産・地元市町村産米を使用した米粉パンについては、その普及を図りながら、希望する市町村に対して提供を行いました。
オ 主食の品質向上
パンの品質向上を図るため、県、関係機関及び団体と連携し、10月に委託加工工場47工場すべてのパンについて品質調査を実施しました。
判定の結果は、全工場が「優」でした。
カ 委託加工工場等の衛生強化対策
1学期に異物混入事故が多発したことを受け、6月に関係委託加工工場10工場(県パン組合加盟6工場、県生麺組合加盟4工場)の代表者等を対象に、保健所職員等を講師として、また、8月には全ての委託加工工場代表者等を対象に、防虫対策の専門家及び本会食品衛生管理室長等を講師として衛生強化対策会議(73人参加)を開催し、衛生管理に関する知識や施設整備等に関する研修を実施しました。更に、全工場(65工場)を対象に巡回実地調査を行い、衛生管理の強化に努めました。
また、取扱食品に異物混入等の指摘があった場合には、直ちに現場に急行し事実確認を行うとともに、製造事業者と連携のもと、原因の分析調査を行い、その結果を速やかに学校等に報告しました。
キ 加工事業者の選定
平成28年度の委託加工事業者選定に当たり、県及び市町村教育委員会、栄養教諭等学校給食関係者、PTA及び有識者による選定委員会を開催し、安全衛生管理、製造能力、安定性、補完体制、経営基盤等を審査のうえ、福島県パン協同組合(47事業者)及び福島県生麺協同組合(18事業者)を選定しました。
ク 巡回訪問の実施
県関係機関、市町村教育委員会・学校給食実施校・学校給食共同調理場、米飯・パン・めん委託加工工場、米・小麦粉販売事業者、JA全農等を積極的に訪問し、本会事業への理解と情報交換に努めました。
(4)一般食品の提供
ア 提供量及び提供額
一般食品の提供量は、991,508kgで、前年度比0.6%減の提供となりました。
次に、提供額は、858,670千円で、前年度比3.7%増でありました。
イ 取扱食品の選定及び利用促進
学校給食実施現場の需要動向を的確に把握するとともに、「学校給食用食品委員会」において、主に国産原料を使用した素材品、素材本来の良さを活かした加工品等、新たに推奨食品31品種49品目を選定し、給食実施現場の要望に即応した食品の適正、円滑な提供に努めました。
また、取扱食品の安全性、品質、価格についての理解を得るため、一般食品価格表、ホームページ、給食会だよりなどを活用した食品案内及び献立紹介を行うとともに、研修会を始め様々な機会を利用し普及活動を行いました。
ウ 地産地消への取組み
県の関係部局、JA等生産団体、食品製造加工事業者等と連携し、「冷凍県産ほうれん草」など新たに5品を開発・提供し、学校給食における地産地消の推進を図りました。
特に、県立いわき海星高等学校の生徒が航海実習で捕ったカジキを原料とした「冷凍県産カジキカツ」を県内全域に提供するとともに、同校生徒の参画による食育活動の実施を支援しました。
また、県等が主催する風評被害や地産地消を推進する様々な取組みに参加・協力しました。
エ 共同購入の実施
北海道・東北ブロック各道県学校給食会と協議し、より安全で良質な素材品等15品目を低廉な価格で共同購入して提供しました。
また、共同購入食品に1品目を追加選定し、平成28年度に向け取扱うことになりました。
オ 食品提供についての普及啓発
保護者及び学校給食関係者に本会の食品提供事業等について正しく理解していただくため、学校や各地域で行われた学校給食試食会や親子料理教室等において、本会取扱食品を提供するとともに、その安全性、安定的提供、本会事業の公益性などについて説明を行い、積極的な普及啓発に努めました(14件、 670人対象)。
カ 提供食品価格調整事業
学校給食用食材として使用頻度の高い「たけのこ」「しいたけ」等の価格が高騰し、給食への使用に影響があると判断されたことから、価格支援を行い安定提供に努めました。
キ 配送環境等の整備
取扱食品の安全性と品質管理を徹底するため、配送事業者との連携を密にし、走行時の交通事故防止や荷下ろし時のトラブル防止を徹底するとともに、ノロウィルス対策として配送車内への消毒液配置や運転手の健康管理、手洗いの励行を推進しました。
なお、手洗いについては、管理棟及び倉庫事務室手洗いに温水設備を整えました。
2 衛生管理等に関する業務
(1)食品安全衛生管理室の設置
食品衛生管理の更なる徹底を図るため、新たに食品安全衛生管理室を設置し、専門家を室長として配置しました。
この室と食品衛生管理アドバイザー3名による取扱食品の衛生管理や米飯等の委託加工工場の指導により、衛生管理体制の強化を図りました。
(2)学校給食安全衛生推進会議の開催
学校給食の安全・衛生管理に関する関係者会議を平成26年度に引き続き、6月と10月に会議を開催し、学校給食の安全衛生管理に関する情報や意見交換を行いました。
(3)衛生管理講習会の開催及び講師派遣
学校給食における食中毒防止の観点から衛生管理の徹底を支援するため、福島県教育委員会等と連携・協力し、7月に学校給食調理員を対象とした「学校給食衛生講習会」(26市町村、81人参加)を、9月には学校栄養職員等を対象とした「学校給食衛生検査技術講習会」(12市町村、20人参加)を開催しました。その他、市町村等からの講師依頼に対し、室長又は食品衛生管理アドバイザーを講師として派遣しました(5件)。
(4)学校給食用食品の食品検査
取扱食品の安全性と品質管理の徹底を図るため、次のとおり、定期的、計画的に取扱食品を検査しました。
ア 検査室検査
取扱食品を計画的に抽出し、年間392検体の細菌検査を実施し、その結果を学校等に通知しました。検査結果は、食品衛生法に基づく食品の規格基準にすべて適合していました。
イ 委託検査
残留農薬検査については、主食(パン及びめん)と冷凍野菜等11品目を、また、食品添加物(保存料:ソルビン酸、発色剤:亜硝酸塩)については17品目を専門検査機関に委託し検査を行い、その結果を本会のホームページで公表しました。
残留農薬検査の検査結果は、全品目が不検出であり、食品添加物は全品目が食品衛生法に基づく食品の規格基準に適合していました。
ウ 依頼検査
主食(米飯・パン及びめん)の細菌検査を実施し、安全性を確認しました。依頼検査件数は、118件で、検査結果は、食品衛生法に基づく食品の規格基準にすべて適合していました。
(5)検査機器の貸出
学校給食実施現場に対し「簡易細菌検査器」、「紫外線ランプ」、「ATP拭き取り検査器」、「手洗いチェッカー」、「糖度計」、「塩分計」及び「標準温度計」について90件の無償貸出しを行いました。
3 学校給食の普及充実に関する業務
(1)広報活動
ア ホームページ等による広報
ホームページを10月に全面リニューアルし定期的に更新しました。
また、本会が毎月発行している「学校給食会だより」を全面リニューアルし、内容の充実を図りながら県内全ての学校等に配布しました。
更に、公益財団法人学校給食研究改善協会が発行している機関紙「すこやか18号」について、平成27年3月に文部科学省が配布した学校給食における食物アレルギー対応指針に関わる重要な内容であることから、県内全校分の部数を当協会に求め配布しました。
イ 食育活動等への講師派遣
児童生徒を対象にした食育授業や関係機関からの要請による食生活講話等実施のため、職員を講師として派遣しました(派遣件数は、14件)。
ウ 各種イベント・事業への出展・共催
福島県教育委員会が主催する「ふくしまっ子ごはんコンテスト」に共催しました(10月)。調理室等の貸出し、作品審査、表彰授与等を行ったほか、県教育委員会の監修のもと、入賞作品を掲載した作品集を発刊し全ての小中学校等に配布しました。
なお、この入賞作品の内、中学校の部の最優秀賞作品(「こづゆおにぎりとたっぷり夏野菜」、塙町立塙中学校当時3年 野田悦子さん)は、平成28年6月開催の第11回食育推進全国大会における弁当として商品化されることになっております。
また、一般県民の学校給食への理解を深めるため、福島県教育委員会が県庁食堂で実施した学校給食週間事業に協力し、県産食材等の提供を行いました(1月)。
(2)食文化の伝承と学校給食に関する調査研究活動等
ア 食育に関する調査研究
地元産食材を使用した郷土料理や伝統食を学校給食献立として整理し、紹介するため、栄養教諭等を委員とする食育に関する調査研究会において取組み、調査研究の成果を調査報告書として取りまとめ、全ての学校等関係機関に配布しました。
イ 研究団体等への支援
学校給食に関する研究団体等が行う学校給食の普及充実に関する研究事業等を支援するため、福島県学校給食研究会、同研究会共同調理場部会、同研究会栄養士部会、全国栄養教諭・学校栄養職員協議会県支部に対し助成するとともに、福島県学校保健会養護教諭部会に対しては、8月に開催された第48回東北学校保健大会の事業費の一部を補助しました。
(3)研修会の開催
学校給食共同調理場の役割、学校給食の現状等についての理解促進を図るため、福島県教育委員会等と連携し、4月に新任所長等研修会を開催しました (参加人数は、15市町村、19人)。
また、学校給食管理システムの操作能力向上を図るため、6月に栄養教諭等を対象とした操作研修会を開催しました(参加人数は、25人)。
さらに、栄養教諭・学校栄養職員等を対象に、パンに関する専門的知識の習得を図るため、7月に学校給食用パン講習会を県中方部と県南方部において開催しました(参加人数は、17人)。
(4)中央研修への参加支援
栄養教諭や学校栄養職員等の情報収集や研修のため、食育推進全国大会、学校給食衛生管理指導者講習会、食中毒防止に関する実技講習会、全国学校給食研究協議大会等中央研修会への参加を支援しました(参加人数は、19市町村、35人)。
(5)学校給食用牛乳供給事業
福島県が定めた学校給食用牛乳供給実施方針に基づき、平成12年度から県より指定を受けている学乳代金配分業務について、引き続き受託し、牛乳代金の請求、受領、事業者への支払い等を実施しました。
(6)貸出事業
ア 教材・食器具の貸出
学校等における食育活動を支援するため、指導用フードモデルやバイキング用食器などの教材等の無償貸出を行いました(貸出件数は、956件)。
また、女子栄養大学名誉教授の金田雅代氏が監修した学校給食管理実践ガイドDVDを新たに購入し、貸出を行いました。
イ 冷凍保管庫等の貸出
学校給食用食品の品質保持を図るため、学校給食用冷凍保管庫及び冷凍冷蔵保管庫の無償貸出を行っており、更新貸出を行いました(更新は6台で、貸出台数は、33市町村の120施設に対し142台)。
ウ 学校給食管理システムの貸出
栄養教諭及び学校栄養職員の給食事務の軽減化を図ることを目的として、平成14年度に導入した本システムについては、市町村教育委員会等からの要望に応じた操作指導や直接学校等へ出向き個別指導を行うなどにより、利用の定着化に努めました (貸出件数は、46市町村、133施設) 。
エ 会場貸出
学校給食の円滑な実施及び食育の推進を支援するため、関係機関・団体等に対し、本会研修室等の貸出を行いました(貸出件数は、12件)。
(7)学校給食優良団体・功労者の表彰
9月15日、学校給食に功労のあった個人5名、優良団体1団体を表彰しました。なお、個人の推薦基準について、功績が特に顕著な若手の教職員等も推薦できるよう見直しを行い、1名を表彰しました。
4 運営管理に関する業務
(1)法人運営管理
公益財団法人として、法制度の趣旨に則り、引き続き適切な法人運営に努め、安全・安心な学校給食用食品の安定的な提供及び食育の推進を支援しました。
また、法人運営の基礎となる財務・会計については、公認会計士及び県の指導等を受け適切な運営に努めました。
(2)役員選任等
平成27年度当初、評議員1名と理事1名の異動に伴い、6月の評議員会及び理事会において、評議員1名と理事1名が新たに選任されました。
(3)職員研修の充実
職員の資質向上を図るため、ふくしま自治研修センター、全国学校給食会連合会、ブロック学校給食会研修会や講習の受講、また、商工会議所の検定試験を積極的に受験するなど、職員のスキルアップに努めました。さらに、朝礼時の職員スピーチや食品管理目標等の唱和、ラジオ体操を行うなど、モチベーションや連帯感の醸成に努めました。
(4)原子力損害賠償請求
東京電力株式会社に対し、原発事故発生に伴う売上減等による逸失利益や放射性物質検査に要した費用について、4月に損害賠償請求を行った平成26年12月から平成27年3月分については、7月に合意に至り請求額を受領しました。その後、平成27年4月から7月分について、12月に損害賠償請求を行い、現在、東京電力側で内容の検証中であります。
(5)事務の効率化と経費の節減
原発事故前に比較して本会食品の取扱数量が減少し、財務状況が厳しくなっていること、また、既存の業務システムが導入から7年経過したことに伴い、7月に基幹システム機器とプログラムの見直しを図り、更なる効率化と経費の節減に努めました。
5 主要な行事等
平成27年度の主な行事等は、別表第2「平成27年度主要行事等一覧表」のとおりです。