食中毒菌の話〈ヒスタミン生成菌〉
2016年6月13日更新
ヒスタミン食中毒は化学性食中毒に分類されていますが、ヒスタミンを生成するのは特定の細菌です。アミノ酸の一種ヒスチジンは、特定の細菌が産生するヒスチジン脱炭酸酵素によってヒスタミンに変換されます。ヒスチジン含有量が多いサバなどの赤身魚がヒスタミン食中毒の原因食品となります。
魚肉中に蓄積されるヒスタミン量分布は不均一であるため、同じロットの食品を喫食しても発症する人とそうでない人がいます。一般に、食品中のヒスタミン濃度が1000ppm 以上の場合に発症するとされていますが、摂取したヒスタミン量が問題となります。成人発症者のヒスタミン摂取量は22mgから320mgと報告されています。
ヒスチジン脱炭酸酵素を産生する細菌には腸内細菌科細菌や好塩性発光細菌があります。前者は水揚げ後の二次汚染菌ですが、後者は魚のえらや体表に付いている一次汚染菌です。
一般に、室温が20度以上になるとヒスタミン生成菌が増殖し酵素が産生されて、ヒスタミンが生成されますが、Photobacterium phosphoreum やMorganella psychrotolerans は5~10度でも増殖します。ヒスチジン脱炭酸酵素は、ヒスタミン生成菌が増殖できない冷蔵状態でもヒスタミンを生成するため、水産物の長期冷蔵保存は禁物です。
いったん生成されたヒスタミンは加熱しても分解されません。
(食品安全衛生管理室)